刑事ボロンボRETURNS
『殺しのカルテ』
2006年 10月15日(土) 13:45〜 16:15〜 18:45〜
  16日(日) 13:45〜 16:15〜








カーテンコールでコートと
白衣の裾を翻し、ずらりと
並んだ男性3人!?
コミカルな存在の刑事ボロンボ、
声も体も大きく、いかにも悪役の
エド。
その中にあって、 洋あおいさんが
男役で演じた凄腕外科医ハリーは、
男優2人との絡みも全く違和感なく
かえって歌劇男役のきれいさに
リアルさを加え、ハリーの個性と
悲劇をあざやかに浮き立たせて
くれました。

15年間胸に秘めた、婚約者エミリーを
殺した犯人への復讐と、助けることが
できなかった自分の弱さの罪の意識は、
慌ただしい救急車のサイレンで
破られます。
犯人である重傷患者を前に医師の
倫理と殺意に揺れ動くハリー。
そのハリーの心の闇に強引に付け込み
完全犯罪を示唆し実行するエドに、
強い恐れが殺意になり、ついに事件が
起こります。

コミカルに登場した刑事ボロンボは、
事件の状況やハリーの行動を探り
ジリジリと事件の核心に迫って
いきます。ついにボロンボは確たる
証拠をハリーにつきつけます。
重ねて「あなたは自分の罪から逃れる
為にエドを殺した!」“殺しのカルテ”
は“復讐の完全犯罪のカルテ”では
なく、ボロンボによる“ハリー自身
のカルテ”であった。

終幕「エミリーはもう許してくれて
いますよ」ボロンボの言葉に促されて、
囚われの場所に向かうハリーに、
黒色だった花嫁のベールはまっ白に
変わりエミリーの影が近づき寄り
添います。
遠くを見つめるハリーのかすかな
微笑みは、心の平安を得たことを
感じさせホッと安堵させてくれ
ました。

 冒頭の凄腕外科医を思わせる手術
場面のリアルさ。
エドとハリーの怒りに満ちた迫力
ある殴りあい。
虚飾が取り払われたハリーの心の
叫び。
洋さんは「押し出しの良い・・・
熱演型の・・・」と以前からマスコミ
からも評価されていましたが、今回
久しぶりの本格的な男役として
熱い舞台を見せてくれました。
シリアスな場面を繋ぐコミカルな
場面とミュージカルの楽しさを
充分に詰め込み45分間とは思えない
濃密なサスペンスミュージカルでした。
そして最後の台詞、長い沈黙の後、
ハリーからボロンボ刑事の「カミさん」
の診察結果が告げられます。
患者の心配を気遣う的確で真摯な
説明に「あなたは名医だ!」敬意を
表すボロンボに、上記のエミリーの
場面が繋がります。
何気ないようなこの台詞、ハリーの
人となりが凝縮されていて、哀しさ
を超えて心洗われるような
「闇の貴公子」の時に感じた
北林佐和子作品の冴えと深さに
再び会えた思いでした。

カーテンコールは、3人の男性の
カッコいいダンスに、新しく
洋さんのソロダンスがプラス
されていました。
アンコールの急患?の駄じゃれと
電気ショックのアドリブは一段と
弾けて、ゑびす座は大いに沸き
ました。










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