2009年 
 浪花人情紙風船団
  ペーパーバルーン公演
   SHOOT.3

  
CABARET
  〜極楽行キャバレーへようこそ〜 

 ワッハホール

 2009年5月28日(木)〜31日(日)
   全7公演






昨年の「河内の國の溜め池の底」
(作・脚本 北林佐和子 
演出 三浪郁二)好評に続く、
ケッサク音楽ファンタジー第2弾。
直前の4月17日〜19日極楽歌劇団、
精華小劇場公演 
「蝶子と吉治郎の家」
(作・演出 北林佐和子)の大盛況
もあり、同じ北林佐和子さんの
作・脚本の舞台に一段と期待が
膨らみました。
期待どおり、いやそれ以上に面白く
 “立ち見”が出るほどで、怖い話
ながらとても楽しい舞台でした。

ホームレスが徘徊し、子鬼たちが
遊ぶ異界との狭間のような場所に
迷い込んだ男。
その男に近づき 
「極楽キャバレーへようこそ」
と誘いかけるミステリアスな女
ラ・セッツ(洋あおい)・・・
躊躇する男に、女は羽織っていた
コート、スカーフ、サングラスを
いきなり取り、
たちまちゴージャスなドレス姿に、
そしてそこは現実世界の異界 
“キャバレー”
灰色の世界から “極楽キャバレー”
 のスターが歌い踊る輝きと
極彩色の世界へ、鮮やかな展開に
思わず拍手喝采の幕開きでした。

“極楽キャバレー” の
本格的レビューや歌、漫才そして
ホステスのエマ(紅萬子さん)の
親身なもてなしにくつろぐ客たち。
 その中に ラ・セッツに誘わ
れた暗い顔の鈴木(田村ツトムさん)
もいる。
♪ 鏡の子守唄 ♪ を歌う
ダンサー レッド(沙月梨乃さん)
に鈴木が思わず立ち上がる。 
他の客も「似ている・・・」と
同じように動揺を見せる。
 次第に透けてみえてくる客たち
の本当の姿、客とレッドによく
似たという女との関係。
追い詰められた逃亡犯 鈴木の
行動により、いっきに緊張が
増しエマによって明かされる
真実。
前半終了に向かって、張り巡ら
された伏線が次第に形を成して
くるワクワクするような痛快な
瞬間でした。
後半は閻魔によって、浄玻璃の
鏡に映ったキャバレーの客たち
の真実が明かされ、
そして裁きが・・・

深いスリットのはいったラメの
ロングドレスで、
 ♪ ザ・ヘブンズキャバレー ♪
を歌い踊るトップスター 
ラ・セッツの洋あおいさん、
その妖艶でチャーミング、
そして艶やかさ、ダンスの決まり
方、もうクギ付けでした。




健気な夕子(沙月梨乃さん)に
泣き虫とからかわれる詰襟の
中学生鈴木おさむ君 
♪ 青春の恋 ♪  を歌う二人は
ちょっとおませな少女と気の
やさしい男の子、なにやら
とても似合ってました。
なんとか極楽キャバレーに潜入
した刑事 
大久保すみれ(未央一さん)と
 ラ・セッツの問答はまるで
コント。
達者なお二人でした。
今回洋さんは、衣装も役柄も
たくさんこなされ、今まで
色々な役にチャレンジして
きた成果が花開いたような
目の離せない楽しい舞台
でした。

浄玻璃の鏡によって客たちの
本当の姿、欲望の繋がりが
明らかになり、
裁かれる不実な人、
自己中心で冷酷な人、
金の亡者たち、
まさに今の世の中を映して
いるようでベテラン俳優の
渋い演技に説得力があり
ました。
世の中の荒波に翻弄された
夕子の真実を知った
角さん(楠年明さん) 
の後悔、そして娘を思う親心と、
切ない夕子に涙しました。
地獄の主 “閻魔の裁き” 
はとても怖い罰なのですが、
鬼の安達ヶ原(青野敏行さん) 
が講釈するとその軽薄そうな
芸風がうまく中和してくれます。
 閻魔は悪行を改め、徳を積む
ことを進言しますが、
鬼とは地蔵菩薩と同一とも
化身とも言われているそうで、
見方を変えれば、人間を救う
存在なのかもしれません。
閻魔の裁きの前に歌われる
作曲者本人が歌う “鬼の唄”
 も含め、リピート山中さんの
 音楽もそれぞれ魅力的でした。
大谷盛雄氏のカッコいい振り付け
がありました。
 後半の幕開き 
クールな都会の闇のテーマも
“ザ・ヘブンズキャバレー” 
と共にまた観たいと思わせる
魅力的なものでした。

重いテーマもコントを所々に
はさんで、
“浪花人情紙風船団” 
の味付けという感じでした。
最後、極楽キャバレーも移転
リニューアルの話が出てどこ
に引っ越すのかエマと
安達ヶ原とラ・セッツが
言い合うのですが、幕が開い
てまさに「やられた!」
と苦笑いでした。
そしてそのエンディングに、
またもやクギ付けでした。


公演のDVD近々出るようで、
待たれます。









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