劇団往来 第54回公演 マクベス 



 場所:近鉄アート館
 日付:2022年03月31日〜4月3日









まさに“THE演劇”と言える
シェイクスピアの「マクベス」、
このマクベス夫人役ご出演に期待が膨らみました。

舞台は三方階段状の客席に囲まれたすり鉢の底、
この底のフロアが戦場やマクベスの居城になり、
客席の間の二つの通路は役者が走りぬける街道、
客席が舞台の一部のような緊張感があった。

マクベスとバンコーが凱旋の折、森の中で3人の
魔女と出会い呪文のような予言を聞く。

「グラームズの領主!」「ゴーダーの領主!」
「やがて王になる人!」・・・

戸惑いながらも沸々とマクベスの心の底に潜んで
いた野心が頭をもたげてくる・・・



OSK時代から演技のうまさに合わせ、強い意思と
熱さを持った洋さんの目の力は格別でした。

魔女の言葉に躊躇するマクベスに野望をとげる
ように直線的に迫る。

王になるには、そしてチャンスは今夜!と。
マクベス夫人の強い意志が込められた目が客席を
ヒタツと見据え、凛とした声の台詞が響きます。

まさに鬼のような非情の女!
この緊張感がたまりません。

ダンカン王を刺した血のりのついた刀を死の
現場に自ら戻しにいく気丈さ、手についた血のりに
「ほんの少しの水があれば消えてしまいます」と
動転するマクベスを叱咤激励し続ける。

しかし眠る王を殺したマクベスは、自らの眠り
を殺したと夢遊病者になる。
しかし夢遊病で苦しむのはマクベス夫人の方、
夜な夜なベッドから起きだし、ぶつぶつと
独り言を言いつつ、しきりに手を洗う。

洗っても洗っても血の匂いが消えないと、
次第に狂つたかのように感情が高まり叫ぶ、
がまた急に崩れるように何事もなかったように
眠りに入る。
とぼとぼと寝間に向かうマクベス夫人の姿が
憐れで哀しい。

マクベス夫人は過去の罪に囚われ、マクベスは
未来の不安に囚われ魔女の予言に衝かれた
白日夢ように戦い滅びに向かう。

音楽でも舞台装置でもない役者の台詞と
表現力の舞台に引き込まれました。

次回も楽しみです。










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